父と息子 7
「俺のせがれはどうしているのだろう」「まだ、勉強しているだろうか。
階下でテレビを見ているだろうか。
いや、家にちゃんと居るのだろうか」この"糖衣錠の社会"の中で親父のひと言は、うるさく、効果は小さい。
だが「自分はわが子をちゃんと育てたのだろうか。
勉強ばかりでなく、ちゃんと人様に迷惑をかけない、自分の足で社会を歩んでいける男に」。
巣立つまで残り時間は少ない。
「息子よ」、男は祈るような気持で自宅の戸を開ける。
こんな毎日がもう何年も続いている。
久し振りの休日出勤で、男は地下鉄・渋谷駅の階段を上がっている。
もう少しで地上に出るというとき、男の横を手を繋いだ二人連れの男が追い抜いて、一歩一歩階段を上がっていった。
二人ともスニーカーを履いて背に小さなリュックを背負っている。
「渋谷へ来たぞ。
公園通りだ」。
男同士が手をつないでいる風景なぞめったに見ないので、男はついつい謹勲好きそうな目を二人に投げ掛けた。
なんというか、同じ子供でも、息子と娘では父親の目線というのは変わりますね。