父と息子 6
宮大工の西岡常一さんの家に伝わる法隆寺宮大工の口伝では、「堂塔建立の用材は木を買わず山を買え。
木は生育の方位のまま使え。
峠、中腹の木は構造骨組みに、谷間の木は雑作材にせよ」と伝えている、という。
こうすれば、樹齢一五〇〇年の檜は、最少限一五〇〇年もつという。
「谷間の木は雑作材にせよ」なんと荒々しく、厳しい教えか。
大木は水の豊富な場所には植えないのだそうだ。
地下一メートル~五メートルなどという地表に近いところに地下水が流れていると、木は十分に根を張らなくても生育する。
それで成長が止まり、木が弱って木の先のほうから枯れてくるのだそうだ。
これは戦後突然出てきた理論ではなく、一〇〇〇年を超える経験に裏打ちされた"本性"を見る知恵、いわば証明された千古の知恵なのである。
しかし、今の時代にこんなことを言えば、古い奴と一蹴されそうである。
しかし、棟梁じゃないが「性の悪いのは駄目」である。
人間がしかるべき環境で、しかるべく育てられたか、個々人の本当の性根を見極めねばならないのである。
家が近づいてくると、男の胸は疹き始める。
それぞれの木に特性があるように、人間にもいろいろいるような気がします。