父と息子 3
「旦那さん、今度自前で家つくるときは、夏目の木は駄目ですよ。
木も人間も冬目でなきゃあ。
檜、杉、松、ひば。
木とひと口でいうけれど、木はその種類で性質、特徴が全然違う。
樫なぞは鉄より強いよ。
南洋材などまあ、木じゃない。
年輪も節もない。
ザクザクの草みたいなものですなあ。
また、同じ杉、檜でもね、産地で全然違う。
暖かい地方は目が粗くてね。
狂いやすく、くさりやすい。
成長が早すぎる、夏目は駄目だね。
ところが、同じ種類の木でも寒いところで、じりじり、ゆっくり成長した木は木目が詰まってる。
木肌も綺麗で、強い。
同じ杉でもやはり、秋田杉だ。
木を選ぶならやっぱり冬目に限りますよ。
私もね、職人選ぶときは、寒いところからですわ。
地道で辛抱できますな」親方の話では「今の若い大工にゃあ、もう昔の日本家屋はつくれません。
昔は今みたいにサッシがない。
大工が枠をかっちりつくらなければ、屋根の重みで戸などすぐ動きませんよ。
ごまかしがきかない」。
二、三ミリ狂えば、昔の木戸ではとにかく手直しがいる。
そのために大工は反らない木、よく乾燥した木を一本一本吟味しながら、選んでいった。
木ひとつみるにしても、やはり大工さんの視点というのは、普通の人とは違いますね。